特定非営利活動法人 玉野SDGsみらいづくりセンター
高畠眞人

「素人でも、ここまでできる」——天王池の竹林を守る人たちの10年

玉野天王池竹林の会 代表

高畠眞人

——天王池の竹林を守る人たちの10年

2026年5月27日|取材・編集:NPO法人 玉野SDGsみらいづくりセンター

「素人でも、ここまでできる」——天王池の竹林を守る人たちの10年

玉野天王池竹林の会 代表・高畠眞人さんインタビュー

荒れ果てた竹山を、一人で切り開いた4年間

天王池のほとりに広がる竹林。今でこそ日差しを受けた笹の葉が美しく輝き、遠くポーランドやインドネシアからも観光客が訪れる場所になりましたが、その始まりは一人の男性の小さな「面白そう」という気持ちからでした。

「京都の竹林を訪ねたとき、これが地元・玉野にもあったら面白いんじゃないかと思ったんです」

そう振り返るのは、玉野天王池竹林の会の代表・高畠眞人さん。約4年前、土地の所有者である木下さんの許可をいただき、たった一人で整備を始めました。

当時の竹林の状況を尋ねると、高畠さんは苦笑いしながら答えてくれました。

「傘を差すスペースもないくらい、鬱蒼としていました。入り口付近から木が生い茂っていて、中に入ることすらできない。近隣の方からも『怖くて気持ち悪い』と言われていたくらいです」

参考にしたのは京都の竹林。柵の作り方、竹の間引き方、歩道のデザイン……。すべてを手探りで試しながら、最初の3年間はひたすら独学で続けました。

仲間が集まり、活動が動き出す

転機が訪れたのは2021年。活動が山陽新聞に掲載されたことをきっかけに、安藤護さん、古川明子さんが加入。翌2022年2月には國中真佐子さんや原田さん、森寺さん夫妻、藤原さん夫妻も参加するようになりました。

「新聞を見てつながってくれた方が、また別の方を連れてきてくれて。気づいたら仲間が増えていた」

現在は毎週土曜日の午前9時から11時を目安に、和気あいあいと作業を続けています。

粉砕機75万円の調達劇——補助金と、人の温かさ

メンバーが増え、作業のペースが上がるとともに新たな課題も生まれました。伐採した大量の竹をどう処分するか、です。

「枯れた竹をそのまま置いても、隠しても、かさばるし臭いも出る。どこにも行き場がなくて本当に困った」

そこで2022年、玉野市の「協働のまちづくり補助金」を申請。30万円の補助金を得ることができましたが、目標の竹チップ粉砕機(チッパー機)は総額約75万円。まだ45万円が足りません。

「もう、いろんな人に声をかけて寄付をお願いしました。そしたら集まったんです。あのときは本当に嬉しかったですね。あの機械がないと、竹の整備そのものができないですから」

現在、粉砕した竹チップは深山道の駅、ダイキ、JAはなやか中央店で販売。年間約5万円の売上を燃料費やメンテナンス費に充て、活動を回す仕組みが整いました。

「嘘だろ!」——来訪者の驚きが、一番の励み

整備を重ねた竹林は、訪れた人が思わず「嘘だろ!」と声を上げるほどの美しい景観へと変貌しました。

「入り口から見上げると、竹の間から木漏れ日が差し込んで。あの瞬間が一番綺麗なんです。遊歩道も、上に登るほど道幅を少し狭くして、遠近感で長く見えるよう工夫しています」

認知はSNSやYouTubeを通じて国内外へと広がり、今では札幌・鹿児島はもとより、ポーランド・インドネシア・ハワイ・台湾・タイなど海外からの観光客も訪れるようになりました。

「ポーランドから5人が来てくれたことがありましてね。そのうちの1人が日本語を話せる方で、みんなを案内してくれた。言葉の壁があっても、こうして来てくれる人がいるのが嬉しくて」

近年はコスプレイヤーの撮影地としても人気を集めており、寄付いただいた方のお名前を短冊に書いて飾る「風鈴の演出」も、直島・ベネッセからヒントを得たアイデアです。

また、地元・玉野高校の生徒たちがボランティアで伐採を手伝いに来てくれたとき、「綺麗になって気持ちいい」「楽しかった」と言って帰っていったことも、大切な思い出として語ってくれました。

素人が作る「モデルケース」として——地域への広がり

この活動が評判を呼び、福山の方から「真似して作りたい」という声が届いたり、常山の歴史文化研究会から「竹林整備のノウハウを教えてほしい」という相談が寄せられるようになりました。

「素人でも、ここまでできるんだという見本になれればいい。ノウハウは全部お伝えしますよ、いつでも」

その言葉に、この活動の本質が凝縮されています。

夢は「天王池一帯を観光地に」

最後に夢を聞くと、高畠さんの目が輝きました。

「竹林だけじゃなくて、天王池の周辺一帯を観光地にしたいんです。土地の所有者さんの許可をいただきながら、モミジ、アジサイ、桜を植えていく。花が好きだから(笑)。まだまだ草との戦いが続いていますけど、少しずつ広げていきたい」

作業後のお茶会、年に何度かのBBQや焼き肉——温かい人間関係がこの活動を10年近く支えてきました。

「一人ではできなかったことが、仲間が集まるとこんなにも楽しくなる。それが一番の発見かな」

竹林の木漏れ日の中で、今日も高畠さんたちの笑い声が響いています。


玉野天王池竹林の会 毎週土曜日 9:00〜11:00 活動中
竹チップは深山道の駅・ダイキ・JAはなやか中央店にて販売中

取材・文:NPO法人玉野SDGsみらいづくりセンター

取材・編集

NPO法人 玉野SDGsみらいづくりセンター

この記事は、地域で活動する方々の声を届けるインタビュー企画の一環として作成しました。