特定非営利活動法人 玉野SDGsみらいづくりセンター
日記

コーディネーター日記 |玉野高校。職業調べって、なんだ?

2026年6月21日西田井祐也|社会教育士5分で読めます

職業調べは、少し危ない。

いきなりそんなことを言うと、学校関係者に怒られそうである。

いや、怒らないでほしい。僕は職業調べを否定したいわけではない。むしろ、とても大切な時間だと思っている。

ただ、今日キャプションを書きながら、少し引っかかった。

高校1年生が「将来どんな自分になりたいか」と向き合い、班でひとつの職業を調べる。看護師、保育士、公務員、教師、警察官。おそらく、そういう職業はリストにある。

でも、たぶん「デザイナー」はない。

ましてや「SNS運用をする人」とか「地域の魅力を言語化する人」とか「学校と地域と企業の間で何かをつなぐ人」なんて、ほぼ確実にない。

僕の職業、出席番号でいうと欠席扱いである。


好きなものだけでは、職業は決まらない

たとえば、服が好きな高校生がいるとする。

では、その子はアパレル店員になるのか。

もちろん、それもひとつの道だ。

でも、服が好きだからといって、必ずしもお店で服を売る仕事に向かうとは限らない。

服が好きで、話すことが得意なら、アパレル店員は合うかもしれない。

服が好きで、デザインすることが得意なら、服飾デザイナーという道があるかもしれない。

服が好きで、文章を書くことが得意なら、雑誌編集者やライターかもしれない。

服が好きで、写真を撮るのが得意なら、スタイリストやブランドのSNS担当かもしれない。

服が好きで、数字を見るのが得意なら、バイヤーやMDという仕事もある。

つまり、仕事は「好き」だけでは決まらない。

職業は、好きなものと得意なことと、社会との関わり方の組み合わせで見えてくる。

ここを飛ばして、いきなり職業名に向かうと少し危ない。

「医療に興味がある」から看護師。

「子どもが好き」だから保育士。

「絵が好き」だからイラストレーター。

もちろん間違いではない。

でも、その人の中にある可能性を、ひとつの職業名に早く閉じ込めすぎてしまうことがある。


職業名は、便利だけど雑でもある

職業名は便利だ。

「看護師です」

「先生です」

「デザイナーです」

そう言えば、なんとなくイメージが伝わる。社会の中で説明しやすい。進路指導でも扱いやすい。求人票にも書きやすい。

でも、職業名はかなり雑でもある。

同じデザイナーでも、服を作る人、Webサイトを作る人、チラシを作る人、体験を設計する人、ブランドを考える人がいる。

同じ先生でも、教科を教える人、クラスを支える人、進路を考える人、地域と学校をつなぐ人がいる。

同じ社長でも、ふんぞり返っている人もいれば、請求書を確認しながらコーヒーを飲みすぎて反省している人もいる。ちなみに後者は僕である。

だから本当は、職業名だけを調べても、その仕事の本質にはなかなか届かない。

必要なのは、「その仕事は何をしているのか」だけではなく、

「その仕事では、どんな力を使っているのか」

「どんな人と関わっているのか」

「どんな問いに毎日向き合っているのか」

まで見ることだと思う。


職業調べの本当の問い

だから、職業調べで本当に大切なのは、

「この職業になるにはどうすればいいか」だけではないと思う。

もちろん、それも必要だ。

資格、進学先、働き方、収入、休日。現実を知ることは大事だ。夢だけでは家賃は払えない。家賃はかなり現実派である。

でも、もう一歩踏み込むなら、問いはこうなる。

自分は何に興味があるのか。

どんなことなら続けられそうか。

どんな力を使っているとき、自分らしくいられるのか。

誰の役に立つと、少しうれしいのか。

職業調べとは、職業名を覚えることではない。

自分の「好き」と「得意」と「関わり方」を、社会の中に置いてみる練習なのだと思う。

そう考えると、この時間はかなり面白い。

そして、少しだけ難しい。

だからこそ、大人が横にいる意味がある。

「あなたはこれに向いている」と決めるためではなく、

「その好きは、こんな形にもなるかもしれないよ」と選択肢を広げるために。

職業調べって、なんだ?

今日の答えは、たぶんこうだ。

職業を調べながら、自分の組み合わせを探す時間。

地味だけど、すごく大事。

そして僕自身もまだ、自分の職業名を探している途中なのかもしれない。

まあ、履歴書には入りきらないので、そこだけ少し困っている。

西

西田井祐也|社会教育士