玉野高校「たまクエ」が最優秀賞!探究学習から生まれた地域ロゲイニング

うれしいニュースが届きました。
玉野高校の「たまクエ」が、山陽学園大学主催「第8回 地域マネジメントコンテスト」で最優秀賞を受賞しました。🏆
コーディネーターとして玉野高校に関わっている身として、正直、知らせを聞いたときは少し声が出ました。
「たまクエ」は、玉野高校の総合的な探究の時間から生まれた探究学習の取り組みです。授業の中のひとつのアイデアが、まちに出て、人とつながり、最後には外の世界から評価されるところまで届いた。
今日は、その道のりを少し振り返ってみたいと思います。
地域マネジメントコンテストとは
まずは、コンテストのことを簡単に。
地域マネジメントコンテストは、山陽学園大学 地域マネジメント学部が主催する、高校生のための地域づくりコンテストです。高校での課題研究や部活動、自主研究などから生まれた、地域課題の発見・調査、解決策の提案、実際の活動の実績などを募集しています。
今年の第8回は、2026年10月4日(日)に山陽学園大学で開催されました。一次審査で5作品ほどに絞られ、通過したチームは20分のプレゼンテーションと、審査員との質疑応答に臨みます。
アイデアの面白さだけでなく、「それは本当に地域の課題を解決するのか」「実際に動かせるのか」まで問われる場です。
そこで、玉野高校の「たまクエ」が最優秀賞をいただきました。
始まりは、ひとつの問いだった
「たまクエ」の出発点は、とてもシンプルな問いでした。
玉野の魅力を、どうすればもっと伝えられるだろう?
地元の高校生なら、一度は考えたことがあるかもしれません。「玉野って、何もないよね」という声と、「いや、いいところあるよ」という気持ち。その間にある、もやっとした感覚です。
この問いから生徒たちが考えたのが、玉野高校版のロゲイニングでした。
ロゲイニングは、地図を片手にチェックポイントを巡り、制限時間内にどれだけポイントを集められるかを競うアウトドアスポーツです。決まったコースを走るのではなく、どこをどの順番で回るかを自分たちで決めるのが特徴です。
これを「まちの魅力の再発見」に使う。
チェックポイントを、玉野のいいところに置く。参加者は、ゲームとしてまちを歩きながら、知らなかった場所や、通り過ぎていた景色に出会う。
「伝える」を、パンフレットや動画ではなく、歩いて体験してもらう形に置き換えたところが、このアイデアの面白いところだと思います。
授業のアイデアが、実際のイベントになるまで
とはいえ、アイデアを出すことと、それを形にすることは、まったく別の話です。
最初は授業の中のアイデアだったものが、少しずつ地域の方々とつながり、実際のイベントへと進んでいきました。
有志の生徒たちが取り組んだことを並べてみると、なかなかの量です。
- 企画づくり
- 応募書類の作成
- 補助金の申請
- チェックポイントの選定
- チラシ制作
- 参加者募集
- 当日の運営
どれも、大人がやっても手間のかかる仕事です。書類は一度で通るとはかぎらないし、チラシは作ってみると「伝わらない」に気づくし、参加者は思ったように集まらないこともある。
それでも生徒たちは、自分たちで考えながら一つひとつ形にしていきました。
そして6月、「Let's『たまクエ』~玉野のいいとこ再発見!~」として実際に開催。
教室で考えたことが、本当にまちの中で動いた日でした。
なぜ「実際にやる」ことが大きいのか
ここで、少しだけ「なぜ」を考えてみます。
探究学習では、よく「課題を見つけて、解決策を考える」ところまでで終わってしまうことがあります。発表スライドの最後のページに「〇〇を提案します」と書いて、拍手で終わる。それも大事な学びです。
でも、実際にやってみると、景色が変わります。
心理学者のアルバート・バンデューラ(1977)は、「自分ならできる」という感覚(自己効力感)を育てるいちばん強い源として、自分でやりとげた経験を挙げています。人から「できるよ」と言われるより、他人の成功を見るより、自分の手で何かを成しとげた経験がいちばん効く。
「たまクエ」で生徒たちが積み重ねたのは、まさにこれだと思います。
書類を出した。通った。チラシを配った。人が来た。当日、思いどおりにいかない場面もきっとあった。それでも最後まで回しきった。
ひとつ一つは小さな「できた」です。でも、それが何十個も重なったとき、「自分たちでもまちに何かを仕掛けられる」という手ごたえになる。
賞は、その手ごたえに外から名前がついたものなのだと思います。
賞を取ることが、探究の目的ではない
もちろん、賞を取ることだけが探究の目的ではありません。
賞がなくても、「たまクエ」で生徒たちが経験したことの価値は変わらない。むしろ、賞のためにやっていたら、ここまで泥くさい作業を続けられなかったかもしれません。
それでも、今回の受賞には意味があると思っています。
自分たちで問いを立てて、誰かに会いに行って、思うようにいかないことも経験して、それでも最後まで形にしたものが、学校の外の人たちから「地域課題の解決策」として評価された。
先生でも、保護者でも、地元の知り合いでもない人から「これはいい」と言われる経験は、高校生にとってそう多くありません。
内側の手ごたえと、外側からの評価。その両方がそろったことは、生徒たちにとってきっと大きなものになると思います。
学校と地域のあいだに立つ人として
コーディネーターの仕事は、学校と地域のあいだに立つことです。
生徒のアイデアと、それを受け止めてくれる地域の人をつなぐ。授業の時間割と、まちの時間の流れをすり合わせる。ときには「それ、誰に聞けばわかるかな」と一緒に考える。
主役は、いつも生徒です。コーディネーターは、舞台袖で照明の位置を少し直すくらいの役割だと思っています。
それでも、「たまクエ」のように、授業のアイデアがまちのアクションになっていく過程に少しでも関われたことは、本当にうれしいことでした。
「たまクエ」には、もうひとつ面白い構図があります。
ふだん地域の行事では、高校生は「参加してもらう側」になりがちです。でも「たまクエ」では、高校生が仕掛ける側で、まちの人が参加する側。この矢印が逆向きになるだけで、生徒の見ているまちの景色も、まちの人が見ている高校生の姿も、少しずつ変わっていくのだと思います。
探究が地域に出ていくと、学ぶのは生徒だけではなくなる。 これも、今回あらためて感じたことです。
そしてもうひとつ、玉野のまちには、高校生の挑戦を受け止めてくれる大人がちゃんといる。チェックポイントに協力してくださった方、参加してくださった方、相談に乗ってくださった方。今回の最優秀賞は、そうした地域のみなさんと一緒に取った賞でもあると思います。
これからの「たまクエ」へ
玉野高校のみなさん、本当におめでとうございます!👏
そして、ここからがまた楽しみです。
今回の受賞をゴールにせず、「たまクエ」がこれからも玉野のまちの中で育っていくこと。来年の生徒が引き継いだり、別の形に化けたり、地域の行事として根づいたりするかもしれません。
探究は、終わりのない問いです。「玉野の魅力をどうすればもっと伝えられるだろう?」という問いも、きっとまだまだ続いていく。
次はどんな形でまちを歩かせてくれるのか。ちょっとわくわくしながら、見守っていきたいと思います。たぶん、また声が出ます。
SynQ Creative代表 / 玉野高校・玉野商工高校 コーディネーター
西田井祐也


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